なぜ株だけでは「お金が使いにくい」のか
株式投資は、とても優れた資産形成の手段だと思います。 ただ、実際に長く続けていくと、こんな感覚を持つ人も多いのではないでしょうか。
「資産は増えているはずなのに、なぜか生活はあまり変わらない」
その理由は、株という資産の性質にあります。 株はあくまで投資であり、融資を受けることができません。
つまり、1億円持っていれば、投資できるのは1億円まで。 お金を元手に、さらに大きなお金を動かす、ということができない構造です。
株式のリターンを長期データで見ると、年率で2%〜6%程度、 高く見積もっても10%以内に収まることがほとんどです。
平均的な数字として5%を使うと、 1億円を投資した場合、増えるお金は年間で約500万円。
もちろん、これは十分に大きな金額です。 ただし、ここで一つ大きな制約があります。
株では、レバレッジをかけて安定的に運用することができないという点です。
信用取引という方法もありますが、私はこの方法を選びません。 理由はシンプルで、「長く持ち続けられない」からです。

たとえば、1億円を3倍の信用取引で運用していたとします。 実質、3億円を動かしている状態です。
ここで株価が10%下落すると、 通常なら損失は1,000万円で済みます。
しかし信用取引の場合、損失は3,000万円になります。 評価額は、一気に7,000万円です。
数字だけ見れば「まだ7,000万円ある」と思えるかもしれません。 けれど、この下落を冷静に受け止めて、何十年も持ち続けられるかと考えると、 現実はかなり厳しいと思います。
実は私自身、過去に信用取引で大きな失敗をしています。
最初の1年目、2年目は順調でした。 短期売買も行い、資産は増えていました。
しかし3年目に大きな下落があり、 追加資金を入れることができず、強制ロスカット。
その結果、当時の全財産だった約250万円を、すべて失いました。
この経験から、信用取引と個別株には二度と手を出さないと決めました。
では、なぜ株だけでは「お金が使いにくい」のでしょうか。

理由はとても単純です。 株は、基本的に現金収入を生まないからです。
インデックス投資では、配当は自動的に再投資されます。 ETFでも、資産形成期には再投資する人がほとんどでしょう。
たとえば、年間500万円を使いたいと考えた場合、 5%で逆算すると必要な資産は1億円になります。
そこに到達するまでは、 証券口座の中で数字が増えていくだけで、 生活で使えるお金はほとんど増えません。

そのため、 「評価額2億円」「3億円」という数字があっても、 収入という意味では、生活はそれほど変わらないのです。
一方で、不動産はまったく違う性質を持っています。

不動産は投資であると同時に、事業です。 そして銀行が融資をするのは、事業だけです。
不動産は「設備」として扱われるため、 建物に抵当権を設定し、融資を受けることができます。
たとえば1億円の金融資産があれば、 自己資金1,000万円を使って、1億円規模の物件を購入することも可能です。
この時点で、 資産規模は一気に拡大しますが、 純資産は大きく減りません。
さらに、不動産は毎月家賃収入を生みます。 経費と返済を差し引いた残りが、キャッシュフローとして手元に残ります。

このお金は、 次の投資に回してもいいですし、 生活費として使っても構いません。
株は「増やす力」に優れています。 不動産は「使えるお金」を生みます。
この役割の違いを理解することが、 資産形成を“生活につなげる”ための大きなポイントだと思います。
