共働きでも、なぜか安心できなかった理由
これは、子育てをしながら働く、ある共働き夫婦から受けた相談の話です。 収入は2人分あり、仕事も安定している。 それでも、どこか漠然とした不安が消えなかった。 その違和感をきっかけに、家計を見直すことになりました。
夫は35歳で年収700万円、妻は33歳で年収500万円。 世帯年収は1,200万円。 子どもは保育園に通う年長の6歳です。 数字だけを見れば、一般的には「恵まれている」と言われる水準だと思います。 本人たちも、これまでは「家計は問題なく回っている」と感じていました。
変化があったのは、年末年始に家計を整理したときでした。 住宅費、食費、保育料、日々の生活費。 一つひとつ確認していくうちに、 思っていたよりも支出が多いことに気づきます。

年間の貯金額は約50万円。 ところが、感覚としては「100万円くらいは貯まっているはず」だと思っていました。 家計簿上では黒字になっている。 それなのに、実際の口座残高を見ると、増えているのは半分ほど。 ここで、数字と実感のズレがはっきりと表れました。

このズレの原因は、家計の仕組みにありました。 収入から生活費を引き、残った分を貯金する。 いわゆる「余ったら貯金」という形です。
この方法では、生活費が増えれば、その分貯金は減ります。 毎月の貯金額は一定にならず、 年間でどれくらい貯まるのかも把握しにくくなります。 「これくらいは残っているだろう」という感覚が、 いつの間にか現実とずれていきます。
共働きで収入が安定していると、 「多少の出費は問題ない」という判断をしやすくなります。 時短家電を導入したり、少し質の良いものを選んだり。 それ自体は合理的な選択でもあります。 時間と体力を守るための支出は、 共働き家庭にとって必要な側面もあります。
ただ、この家族には将来に向けた明確な目標がありました。 それは、資産からの収入を増やしていくこと。 子どもの教育費、そして自分たちの老後。 長い目で見たときに、最低でも5,000万円程度の金融資産を築きたいと考えていました。

そこで、年齢と現在の資産状況をもとにシミュレーションを行いました。 35歳から65歳までの30年間で5,000万円を目指す場合、 現在の貯蓄ペースでは届かないことが数字ではっきりと分かります。 教育費も考慮すると、 年間250万円前後の貯蓄が必要になる計算でした。
この結果を受けて、選択を迫られました。 家計を大きく見直して目標を維持するのか。 それとも、目標そのものを調整するのか。 どちらが正しいという話ではありません。 生活に合わない目標は、続かないからです。

最終的に、この家族は目標を5,000万円から3,000万円に下げることを選びました。 そうすると、必要な貯蓄額は年間150万〜200万円程度となり、 家計に現実的な余白が生まれました。 数字が変わると、見える景色も変わります。
大切なのは、 「安心できる金額」を感覚ではなく数字で確認することです。 世帯年収が高くても、将来の安心が自動的に手に入るわけではありません。 安心は、仕組みと計画の積み重ねでつくられていきます。

お金の目標に正解はありません。 ただ、目標を決めたなら、 家計を整え、学び、検証し続けることが必要になります。 投資に特別な才能は要りません。 必要なのは、学び続ける姿勢と、続ける力だけです。
共働きという環境を、ただの安心材料で終わらせるのか。 それとも、将来の選択肢を広げる土台にするのか。 その分かれ道は、数字と向き合ったときに見えてくるのだと思います。
